福島市で春の妖精 カタクリとの再会
私が小学生だった頃、蝶を追いかけて雑木林に迷い込んだ。道に迷い途方に暮れていると、足元に美しい花が沢山咲いていた。私は蝶のことを忘れて、花を眺め続けた。やっと家に戻り、母に花の名前を聞くとカタクリだと教えてくれた。
弥生三月半ば、知人に連れられてカタクリの群生地を訪れる機会を得た。私にとっては小学生の頃以来、数十年ぶりにカタクリと再会ができた。カタクリは長く厳しい冬を耐え抜き、早春に茎先に1つずつ下向きに淡い紅紫色の花を咲かせる。
またカタクリは「春の妖精」と呼ばれる。雑木林の中でひたむきに、そして可憐に花を咲かせる姿は、恋人との再会を待ちわびた少女の姿を彷彿させる。
ただ、カタクリは落葉樹などの下草として自生している。つまり、落葉樹を中心とした雑木林がなければカタクリは姿を消してしまう。毎年、カタクリが咲く、自然豊かな環境を残すことは、私たちの責務ともいえるだろう。
by手嶋純